調査普及課の亀井です。2020年10月21日に筑波大学の学部生に「環境リモートセンシング」の講義を行いました。通常は対面で講義しているのですが、今年はコロナの影響でオンラインでの講義でした。
学生の皆さんの顔や反応が見えないのは残念でしたが、例年よりも多くの質問をもらいました。時間内に全ての質問に答えられなかったので、この場を使って回答したいと思います。
Q: 今回は衛星での観測技術についてのお話でしたが、将来ドローンの技術発達・普及により、現行の衛星観測に何らかの変化がもたらされる可能性はあるのでしょうか。
A: 衛星よりも空間分解能が高いデータを手軽に取得できるので、既にリモートセンシングの分野でドローンの利用が進んでいます。今後、衛星データとの組み合わせでデータの価値が更に高まっていくと期待しています。
Q: 打ち上げる値段ではなく、衛星そのものを作るのにかかる費用はどれくらいですか。
A: 例えば、現在JAXAが運用あるいは開発しているだいち2号、3号、4号の開発費は、それぞれ300億~400億円です。
Q: マイクロ波が雲を透過するお話を聞いて、色々工夫をすることで水を透過させ、海底の形状を観測できたらリモートセンシングの裾野が広がると思いました。(もし既にあったら凄い)
A: マイクロ波ではありませんが、光学センサを使って水深を推定し、等深線図を作成することは行われています。
Q: 人工衛星の総数は年々増加していると思いますが、理論上はあとどのくらい人工衛星を増やせるのか疑問に思いました。
A: 考えたこともありませんでしたが(笑)、軌道と高度の組み合わせは無数にあるので、まだまだ衛星の数は増やせそうです。2018年のあるレポートでは、過去10年間で1,200機の衛星が打ち上げられ、今後10年間で7,000機の衛星が打ち上げられると推定されていました。
Q: 100基以上あるような小型衛星はどのような軌道をとっていて、どのように制御されているのでしょうか。
A: 講義で紹介したPlanet社の衛星は、高度475kmの極軌道に投入されています。また、全ての地球観測衛星は、地上局から信号を送って軌道の制御や地球の観測を行っています。
Q: これから技術が進歩していくと、国によってはプライバシーの問題が生じないのかが気になりました。
A: プライバシーとは若干異なりますが、日本の場合、衛星リモートセンシング記録の適正な取扱いの確保に関する法律(略して「衛星リモセン法」)によって、空間分解能の高いデータの扱いなどが規制されています。
Q: 無償で配布されている衛星データと比べて、有償で配布されている衛星データはどのような点で有用なのでしょうか?
A: 一言で言うと、有償データは空間分解能が高いことが特徴です。無償データの分解能は高くても10m程度ですが、有償データのほとんどは1m前後です。
Q: 宇宙での覇権や領域問題のようなものは起こっていないのか少し疑問に感じた。
A: 1967年の宇宙条約で、宇宙空間を平和的に利用することや、各国による領有を禁止することが決められています。しかし、実際には宇宙空間における覇権争いが起こっています。例えば、2007年に中国は軌道上にある自国の衛星をミサイルで破壊するという実験を行いました。軌道上にある敵国の軍事衛星も撃ち落とすことができると知らしめたわけです。
Q: 宇宙デブリの除去問題はどのくらい進んでいるのですか?
A: 日本ではアストロスケール社がデブリ除去のための衛星開発を行っています。2022年度と2025年度に衛星を打ち上げ、大型デブリの除去を進める計画のようです。