調査普及課の亀井です。
6月25日(金)、「豆寄席」で「衛星データ利用の最前線!」について講演いたしました。「豆寄席」は、株式会社豆蔵さんが定期的に開催しているトークイベントで、最新のIT技術などをテーマに様々な方が講演されています。衛星データの基礎や利用について話してもらいたい、という豆蔵さんからの依頼を受け、以下のコンテンツでお話をしました。
- 自己紹介(+RESTEC紹介)
- 「リモセン」の概要
- 最近のトレンドとデータ爆発
- 最前線な利用事例12選
このうち、リモセンの概要は、無料で配信している初心者向けの講義でも同じような話をしています。利用事例は、今後リモセン研修ラボのページでも紹介していければと思いますので、今日は「最近のトレンドとデータ爆発」について紹介いたします。
ここ10年の大きな変化は、まず衛星本体の小型化です。2006年に打ち上げられたJAXAの「だいち」(ALOS)は約4トンの重さでしたが、例えばPlanet社が運用しているDove衛星はわずか4kg です。「だいち」は研究開発衛星で、目的や搭載しているセンサーが異なるので単純な比較はできませんが、重さは1,000分の1です。
このような小型化によって、軌道上の衛星数は飛躍的に増加しています。欧州の打上げ企業大手アリアンスペース社のイズラエルCEOは、先日「1957年以降に地球軌道に投入された人工衛星は9,000機以上ある」と発言しましたが[1]、そのうち最近10年間で打ち上げられた衛星数は7,000機と見られています。
地球観測の分野では、小型化した衛星がコンステレーション(衛星群)を組むことによって、撮影の頻度も飛躍的に向上しました。例えば、米国政府のLandsat衛星は16日に1度しか同じ場所を観測できませんが、100機以上で構成されるPlanet社の衛星群は毎日同じ場所を観測できます。必要な時に必要な場所の情報を得られるため、各種ビジネスに導入しやすくなりました。
ではLandsatのような政府衛星の利用価値が下がったかというと、そんなことはありません。民間企業が1m前後の高分解能データを販売している一方、Landsatは30mの中分解能のデータを無償で提供しています。オープン&フリーと呼ばれる無償化の政策は、ここ10年のもう1つの大きなトレンドです。
Landsatは1970年代から40年以上観測を続けており、過去のデータも含めて無償化されています。40年以上の全球のデータセットは、気候変動や環境問題といった、広範囲で長期間にわたって進行している問題の研究に特に有用です。実際に、Landsatを使った研究は、無償化以前は年間500件程度でしたが、今では約2,000件に増加しています[2]。
まとめると、
●民間企業は小型衛星を数多く打ち上げ、高頻度・高分解能で地表を観測
●政府機関は中分解能衛星で地表を観測し、過去の観測を含めて無償でデータを提供
ここ10年間はこのようなトレンドが顕著で、衛星データ利用のハードルが大きく下がっています。今こそ、大勢の方々に衛星データを使ってもらいたいと思います。
[1] 2021年5月28日AFP https://www.afpbb.com/articles/-/3348899
[2] https://theconversation.com/the-us-government-might-charge-for-satellite-data-again-heres-why-that-would-be-a-big-mistake-113021