リモートセンシングを初めて学ばれる方、これからリモートセンシングデータの利用を考えておられる方を対象に開講している『リモートセンシング基礎講座』。 講座最後の総合演習ではGoogle Earth Engine Appsを用いた地球可視化ツール 『VEGA』 を使い、実際の衛星データ利用を想定した課題解決の考え方と技術を身につけていただいています。希望によりQGISを使用している方もいらっしゃいます。
昨年度に引き続き、ここでは2022年5月26~27日に開講したリモートセンシング基礎講座で実施された総合演習の結果をご紹介いたします。
1.鳥取砂丘~緑化と草取りレンジャーの戦い~
鳥取砂丘の緑化現象について
戦後、防砂林が作られたことから砂の滞留が起こり1980年ごろから緑化が始まり、現在はボランティアにより草取りが行われ砂漠を維持している
目的 : 1980年と現在と比較したいと考えたが、データがない為断念 そこで、近年の緑地化の変化を見ることを目的とする
使用データ : Copernicus
トゥルーカラー
2017年
2019年
2021年
変化は見えずらいため、次に植生が分かるように表示した
植生を目立たせた
2017年
2019年
2021年
結果 : データが2017年からのみだったので、上記の3年を採用した。2021年は前2年に比べると植生が多い。インターネットの記事によるとコロナの影響で草取りボランティアが減少し、緑化が進んでしまったと分かった。 コロナによる人間の行動の変化による影響を衛星画像で見ることができるということに面白さを感じた。
2.Sentinel-2によるトンガ噴火の消失領域把握
2022年1月15日、南大洋州のトンガ王国の海底火山「フンガトンガ・フンガハアパイ火山」で噴火発生。噴火に伴う津波、噴煙によって被災者は推定8万4700人以上にのぼる。
目的 : 噴火前後画像から火山島の消失領域を把握する。
手順① : 変化把握のためのRGB合成
1. Copernicus Open hubからSentinel-2(光学)画像DL
before image : Product ID:S2A_MSIL2A_20200103T215911_N0213_R086_T01KFT_20200103T233545
after image : Product ID:S2A_MSIL2A_20220412T215921_N0400_R086_T01KFT_20220413T002040
2. QGISへインストール>ラスタその他>結合>RGB合成
R:after image, G:before image, B:after image
>2時期の差をRGB合成画像で可視化
>Greenがイベント前、Red+Blue(紫っぽい色)がイベント後で強調される。
手順② : 消失面積把握
1. Before, after imageそれぞれからNDWI(正規化水指数)画像作成
ラスタ>ラスタ計算機>NDWI = (B03-B08)/(B03+B08)
※陸地と海域を分割するため
2. NDWI画像をプロセッシングツールボックス>SAGA>Raster – Filter>Simple Filter>Smooth スムージングフィルターで平滑化
※等高線作成の際のノイズを少なくするため、画像を滑らかにするため
3. NDWI画像に ラスタ>抽出>等高線(contour) で等高線画像作成、島の領域をカバーするポリラインを抽出
>before, after image内の島の領域を可視化
4. ポリラインをポリゴン化>属性テーブル>フィールド計算機>ジオメトリ>$area
>before, after image内の島の領域の面積を計算
画像紹介
Before image:Sentinel-2, 2020/01/03撮像
After image:Sentinel-2, 2022/04/12撮像
手順①結果
2時期変化可視化画像 R:after image, G:before image, B:after image
手順②結果
Before island area : 2878362 m2
After island area : 206104 m2
Lost area : 2672258 m2 >92.8%が消失
Green area : before island area
Purple area : after island area
反省点
・島の領域がカバーしきれていない、あまり正確でない
>等高線(contour)機能でなく、2値化など?
>smoothingフィルタ以外のフィルタ
>NDWIの他の方法で水域-陸域分割強調できるのでは
・消失面積の正確性に欠ける
>島領域が過少気味
このように総合演習の課題はご自身の興味関心分野や仕事や縁のある地域をお選びいただいています。そして講義で学んだことを実際の衛星データを使って見ることができるので、学んだ理解度も進みます。まずは『リモートセンシング基礎講座』を受講してみませんか。