2021年5~6月にかけて衛星データの利用に関して具体的なお悩み解決を望まれていた株式会社amulapo(アミュラポ)へRESTECの研修としては初めての「メンタリング研修」を行いました。メンタリング研修では『 星みくじ 』の開発に向けて必要な知識や実習などを行い、2021年11月にβ版が無事にリリースされましたのでamulapoの田中社長とメンタリング研修を受講されたお二人、講師を務めたRESTEC研究開発部の久保海の4人で対談を行いました。
プロフィール
amulapoメンバー(敬称略)
田中 克明
株式会社amulapo代表取締役、茨城県取手市出身のロボットの専門家。早稲田大学にて博士(工学)を取得。2020年3月に株式会社amulapoを創業し、代表取締役としてxR、ロボット、AI等のICT技術を用いた宇宙コンテンツの開発に従事。宇宙をはじめとした科学技術の発展に向けて、科学技術の発信、社会実装や人材育成のための仕組みづくりに取り組む。
小林 寧々
法政大学大学院生、理工学研究科で人工衛星の制御に関する研究をしている。amulapoでは宇宙コンテンツの開発業務に従事。衛星データを用いたアプリケーション「星みくじ」を始め、xRを用いた宇宙体験コンテンツ、スペースバルーンからダウンリンクしたデータを用いたリアルタイムCGの開発を担当。
川野 孝誠
早稲田大学在学中、商学部で企業のビジネスモデルを研究している。amulapoではwebサイトの作成・運用や、webアプリケーションのフロントエンド開発を担当。
RESTECメンバー
久保 海
RESTEC研究開発部に所属。地球観測衛星の光学センサに関わる幾何補正技術の開発業務や衛星データを用いた船舶の動向分析等に従事。その他、Tellusのe-Learning動画講師、amulapoのメンタリング研修講師を担当。現在は、課題解決の手段の一つとして衛星データを利用してもらうべく、利用普及活動に取り組む。
amulapo設立目的は宇宙エンタメを作りたい、だけではなかった
(久保 海 : 以下、久保):amulapoは日本ではまだ数少ないの宇宙エンタメ専門会社ですよね。
(田中 克明さん : 以下、田中):宇宙エンタメと紹介いただいたのですが、僕らはデジタル技術をうまく扱うことが出来る集団で、それはVRやAR、ロボット、AIといったいわゆるICT技術になるのですが、それらを用いて宇宙体験が出来るコンテンツやアクティビティ、サービスを作りそれを皆さんに届けて、宇宙を知って宇宙を好きになってもらうきっかけを作る会社です。
久保 : するとamulapoはどういった経緯で設立されたのでしょうか。
田中 : 現在、私も宇宙開発系のベンチャー企業でエンジニアとして宇宙開発をしていまして、科学技術の第一線として宇宙機の開発自体を進めるのはとても重要な事でありつつ、一方で、日本が市場として宇宙産業を広げて国際的に勝っていくためには、まず多くの方々に興味を持っていただき、協力を得ることが必要だと気付きました。研究開発だけでなくもっと一般の方々に分かりやすく技術を伝えるには、僕らが持っているデジタル技術を使うと皆さんに体験していただきやすいことに気付いてそれが活動に繋がっています。
久保 : 宇宙を好きになっていただくことを目標の1つにしていると以前からおっしゃっていましたね。amulapoのサイトにアクセスするとトップメッセージには 「わくわくは、宙(そら)にある」、そしてVisionにも明確に「宇宙を利用して社会の仕組みを変える」が書かれています。これらのメッセージに想いが込められていることが伝わりますが、最初に別の会社作られた後にamulapoを設立されていますが、新しい会社にしたのはなぜですか。
田中 : 最初の会社は機会をいただけたので未知ではありましたが、 “VRと宇宙“ をテーマに合同会社を作りました。その時にこの“VRと宇宙“の組み合わせでいろんなことが出来ることに気付いて、いくつかやれる軸が出来てきた中で改めて自分たちがやりたいことを整理した後にamulapoという形で別の会社を立ち上げたというのが経緯です。ちょっと宇宙から外れるかもしれないですが「科学技術の振興」に全体の想いがありまして、私も博士号を取得して研究者として活動していたのですが、そこでは日本の技術力・研究力がかなり落ちてきていることをまじまじと見てきました。本当にこのままでは10年後、20年後は豊かではない日本が待っている、と感じ取ったのです。皆さんにはなかなか理解しづらい部分ではあるかと思うのですが、10年後、20年後の当事者は僕たちで、科学を扱っている身としてはこの現状のままであってはいけない、と強く思ったのも大きなきっかけですね。
技術力が低下してきた原因を考えるとモノづくりを得意としている日本にはまだまだ素晴らしい技術がたくさんあるのですが「発信と社会実装が非常に弱い」ことがうまく行っていない原因であると感じました。だからこそ海外に製品を高値で売れなかったり、国際的に技術導入が遅れて先端技術の潮流から遅れてしまうことも多いのかなと思います。加えて、一般の方々に理解されづらいので未来に向けた科学技術に対する投資がしづらく、それにより研究費が獲得できずに更に技術力・研究力が落ちるという負の循環に陥っているのが現状と感じます。現時点での医療・福祉等の社会福祉は大事な観点ですが未来への投資がなされない文化になりつつあるので、この仕組みから変えなくてはいけない、と思いました。
「発信と社会実装をしっかりする」ことが出来れば楽しさや有用性が社会に伝わると思いますし、より広く理解してもらえるとその科学技術に対してきちんとお金が付くようになり新しい技術も出てくる、負の循環から正の循環に変える必要がある、と根本的な課題に気付きました。僕らとしてはamulapoという媒体にフォーカスさせることで社会課題解決を目指す、という思いから改めて会社として作り、先ほどご紹介いただいたビジョンを設定しました。
また、これまでの宇宙開発はどちらかというとトップダウンで、まずは○○を作ってそのあとどう使おうか、と考えるようなパターンが多かったと思います。今はようやく民間に降りてきて「宇宙ビジネス」として参入企業も増えましたがスタイルとしてはBtoBやBtoGがまだ多いのですが、amulapoでは市場を拡大させたいのでBtoCの形を目指しています。そのためには地に足の着いたやり方でいろんな方に関わってもらい一緒に開発の現場で知恵を出し合って宇宙産業を作る、amulapoはその土壌になりたいです。amulapoは「新しい宇宙開発を目指している会社」であり媒体でありたいです。
久保 : 僕も宇宙産業の裾野を広げる必要がある、と考えています。僕自身も研究では宇宙機器の開発をやっていたのですがなかなか社会実装出来ませんし、しづらい、そして周りに理解されにくい。どうやってお金を稼ぐの?と言われるのですが宇宙開発には携わっていきたい、宇宙産業を盛り上げたいと思いつつ、ではどのレイヤーで、どのようなプレイヤーで戦うのか考えました。やはり宇宙産業の裾野をどんどん広げていくことにより、ピラミッドの頂点にある宇宙の基幹産業がもっと盛り上がっていかなければならないと思っていました。消費する側が消費しないと市場の拡大はしないと感じていましたので、僕は衛星画像を使った社会実装を進めることで一般の方々にもっと使ってもらい衛星データの必要性を伝えていきたいと思っています。それによって皆さんの暮らしを良くしつつ、宇宙産業を盛り上げていくことがやりたくてRESTECに入社したところもあるので、田中さんのお話や活動されていることにとても共感しましたし、そこで会社を立ち上げることが素晴らしいと思いました。
田中 : そうですよね、本当に久保さんと想いが近いと改めて分かりました。一個人、一団体で出来ることではないと思っていますので、みんなで協力して実現できると嬉しいな、と思っています。
学生インターンの川野さん、小林さんのamulapoでの役割
久保 : 今、河野さんは大学生、小林さんは大学院生ということでお二人は学生インターンとしてamulapoにいらっしゃいますが、amulapoとはどのようにして繋がっていったのですか?
川野孝誠さん(以降、川野) : 僕は生粋の文系で小さな頃から宇宙に興味を持っていたというわけでもありませんでした。最初に宇宙に興味を持ち始めたのは大学の授業でポケモンGoの開発者から話を聞き、ポケモンGoには位置情報が使われているそうでその時に初めて衛星データというモノを知りました。とても興味深い話だったので、その後自分でいろいろ調べて衛星データって、宇宙って面白いな、と興味を持ち始めて調べていく過程で同じ大学出身で田中さんを知り、Twitterで追いかけていました。その後、大学のイベントでたまたま田中さんを見掛けて真っ先に声を掛けて会社に訪問する機会を得て、amulapoがやろうとしている社会実装や、教育分野、一般の人にとって分かりやすい観点から宇宙を身近に感じてもらう取り組みをしているとお話を聞いて興味を持ちました。自分のように宇宙に興味を持っていなかった人にアプローチする時に、文系の僕でも役に立てるんじゃないかと思い参加させていただきました。
久保 : 我々の普段の生活で衛星データが使われていること、特にGPSはそうですが、あまり気付かれていませんが知る機会がないとなかなか分からないですよね。授業で知って興味を持ってくれた河野さんはスゴイ機会を得られたのですね。今、河野さんはamulapoではどのような事をやっていますか。
川野 : 僕は主にウェブサイトやアプリ開発時のフロントエンドを担当して運用や更新を行っています。amulapoに入る前に大学の必修授業でプログラミングを学んで面白かったので独学で勉強していた時期がありました。amulapoに入ってからは周りに助けてもらいながら仕事で携わり学んでいます。星みくじのデザインは僕がメインで作りました。試行錯誤をしたというよりデザインを学んでいなかったのでOKがもらえた時は嬉しかったです。星みくじというサービス名を聞いた時に「和風だな」と印象を受けたので、フォントは明朝体を使ったり実際に引く時のアニメーションはみくじ筒が揺れてから結果を出す動きなど、日本っぽいデザインを意識しました。
久保 : そうだったんですね。どうやって目の前の課題を解決するのか、はとても大事なことですよね。僕も星みくじのβ版を試したのですが、雨だったせいか凶が出ました。実際のおみくじデザインなのでアクションが分かりやすく、動作の遅延も感じなかったのでとても扱いやすいWebサービスでした。続いて小林さんのamulapoに関わるきっかけはどうだったのですか。
小林寧々さん(以降、小林) : amulapoにはSPACETIDEという宇宙のイベントで田中さんに出会ったことがきっかけです。私は高校生の時から宇宙開発に憧れを持ち目指してきました。一方で宇宙をみんなに身近に感じて欲しいと思いも持ち続けていて、高校生の頃から宇宙を広めるイベントを開催していました。そんな時にamulapoの田中さんと出会い、宇宙への強い思いと趣味でやっていたプログラミングを生かせる会社があることに驚いて参加させてもらいました。もともとモノづくりが好きでプログラミングは大学1年から始めて今では中高生に教えています。amulapoではxRコンテンツ開発やスペースバルーンから来たデータをリアルタイムにUIで分かりやすく見せるCGを作ったり、星みくじを開発したりして少しづつ技術力を身に付けています。インターンとして参加していますが活動は結構多岐に渡っています。スペースバルーンは学生団体のEarth Light Project実行委員会が上げているもので、amulapoがスポンサーとして参加しています。
田中 : amulapoは宇宙開発を頑張りたいと思っている、特にマイノリティ、例えば若い人、女性、地方在住者などなかなか環境が整っていない方々を積極的に支援しています。今回のEarth Light Projectは学生で頑張っているので僕らが出来る3DCGのお手伝いや、技術で分からないところをアドバイスしています。僕らもいろいろなところと関わりが出来るようになってきたので自分たちもチャレンジしています。小林はリアルタイムでCGを作っていますが、スペースXがやっていることが自分たちでもできるのではないか、というディスカッションから始めています。これは彼女自身が持っているスキルの総まとめのような形になっています。
久保 : amulapoにいらっしゃる方は皆さんパワフルですよね。
田中 : 小林は一人でも出来るし自分で学びながらも出来るのですが、星みくじのプロジェクトではチームを作ってやらなければならないため、彼女は一番苦労したと思います。苦労しながらもそれを完成させたので今後も大学院で研究を続けていくうえでの良い経験になりますしスゴイと思っています。
久保 : 確かに一人で開発するのと大きなプロジェクトチームでやるのとでは、上に立つのか、チームの一員なのか、立場によって役割が変わりますし一人で何でも出来る人は作業を他の人に振れず全てを抱え込みがちになりますよね。チームで開発することは最初苦労したと思いますが、小林さん自身は今回困ったことはありましたか。
小林 : チームメンバーには沢山助けてもらいました。最初は誰にどのくらいタスクを振ればよいのか加減が分からなかったので苦労しました。進捗を確認する頻度、ミーティングのタイミング、そこでは何を話すのかなども手探りでした。オンラインだからこその難しさでした。一緒に開発した人達は皆さん優秀だったので、今思えばもっと頼ればよかったと思っていますが、当時は頼り方が分かりませんでした。
久保 : 僕はスケジュール管理やタスク管理を社会人になってから苦労しました。コミュニケーションで解決する部分もありますが、コロナ禍でもありますし、それぞれ研究や学業もある中でコミュニケーションを密に取るのはストレスのかかることだと思います。
メンタリング研修受講の率直な感想
久保 : では、今回メンタリング研修を依頼してくれた背景と感想を聴かせてください。
小林 : 星みくじは2020年10月にシスコシステムズ合同会社開催の「Tokyo Moonshot Challenge」で優秀賞とNTT東日本賞を受賞したことをきっかけに開発を始めました。私自身が衛星データを触ったことが無かったので最初は独学で調べながらやっていました。しかし、1つのバグで1ヶ月ほど悩んでしまったりと、サービスのリリースを目指すには自分の力だけでは限界があると感じました。座学形式で受講も検討しましたが、今回は星みくじという具体的に作りたいものがあったので、星みくじのイメージを共有して、その実現に向けたアドバイスや実装を相談出来るところがあったらいいな、と思いメンタリング研修を依頼させてもらいました。
川野 : 僕も衛星データをいじったこともなかったですし、そもそも衛星データがどういうモノなのか分かっていませんでしたが、講義で丁寧に教えてくださるという機会は自分にとって二度と来ないと思っていました。
久保 : 我々としてもこの研修のやり方は初めてでしたので試行錯誤した部分もあったのですが、今後の参考までに要望含めて受講した感想をお願いします。
小林 : まずは座学で基礎的なことを教えてもらい、その後は実装を想定して作業を進めて詰まったら質問をするという形でした。正直に言うと1回の講義だけでは理解できなかったのですが、受講後に質問したらすぐに答えてもらえたのですごく助かりました。技術的なサポートはもちろんのこと、それだけでなく星みくじを実現させる際に、もっとこうしたら星がきれいに見えると思う、水蒸気の量を見るのはどうか、DEM(数値標高モデル)データを使ってみるのはどうか、などアドバイスもいただけたのが良かったです。発展的な実装は自分たちだけでは思いつかなくて、リモセンを専門にしている久保さんだからこそだと思います。
川野 : 内容は結構難しかったし半分も理解できなかったと思うのですが、それでも基礎的な知識を座学と衛星画像を操作する実習で丁寧に教えてもらえたので、自分にとって有益だと思っています。
久保 : そういってもらえて嬉しいです。ありがとうございます。アイディアを言っていただけたのでこのデータを使ったほうがいい、あっちは使えるかな?と具体的なアドバイスが出来ましたが、実際に我々が作るわけではないのでこちらからのアドバイスは取捨選択していってくださればよいのかなと思っていました。
今後の星みくじについて
久保 : そして2021年11月にβ版の星みくじがリリースされましたね。非常に分かりやすくて見た目もシンプル且つきれいで面白いコンテンツだなと思いました。星みくじを今後どうアップデイトさせるのか、マネタイズをさせるのか、などのビジョンを聴かせてください。
小林 : 今回のβ版は最低限の機能なのですが、今後は使ってくれた人からの意見を参考に技術的にもっと発展させていきたいと思っています。今回は首都圏だけなのですが、他の県でも星みくじを使いたいという要望も沢山届いているのでまずはエリアを拡張していきたいです。
久保 : 特に田舎の人間は何となく分かってそうだけれど、もっといい場所があれば教えて欲しい、と思っているでしょうね。知っているようで知らないので新しい発見が出来るのは地元の人にとっても良いことになります。どんどんエリア拡張して欲しいですね。そうすると今後も星みくじの開発はどんどん続けていかれるのですか。
田中 : そうですね、今の話のとおり拡張していくことと、うまくビジネス性を考えて企業に利用していただけないかと思っています。いろいろな人が使うようになれば、星みくじを利用した人が何かを購買していく流れも検討しています。先日まで出張で鳥取にいたのですが関西や大阪の人から星みくじが使えない、早く使えるようにしろ、と期待の声もいただいています。先日も月食がありましたが星みくじというサービスがあることによって空を見てみようと思う人が増えたのではないかと思います。これまでは単純に空を見ていただけだったのが、どこに行ったらきれいに見れるのか知りたいニーズを感じています。市街地は地方でも明るいのですが、近くのデパートの屋上だときれいに見えたりしますので皆さんの行動を変える何かになってきているのかな、という期待があります。
久保 : そうですね、行動変容が出来たらすごいですね。少し戻るのですが、amulapoのビジョンに地域活性や人材育成がありますが、地域活性プロジェクトを行う目的を聴かせてください。
田中 : 宇宙を上手く利用してみんなで享受できるように繋げていかないと市場拡大にならないことに気付いていましたが、一方宇宙を活用することによって恵まれる所も生まれていまして、それが地方でした。地方の課題は人口減少で特に若い人が首都圏に出て帰って来ないために苦しんでいるという現実があります。そこへ宇宙という夢のキーワードが入ることによってそれだけでも地域が活性するのですが、宇宙を上手く起点として産業が出来れば新しい雇用も生まれ宇宙をやりたい人がそこで働けるようになるところまで繋がると考えました。宇宙がお役に立てる現場は地方にあることを見つけました。
久保 : 以前、鳥取県で模擬宇宙飛行士イベントの募集もされていますが、なぜ鳥取県から始めたのですか。
田中 : いくつか軸がありまして、もともとHAKUTOの時に鳥取砂丘を利用していたこともあるのですが、それとは関係なく鳥取県の高校の教員の方とお会いしました。東京近郊にいると地方の課題は見えづらく直接聞いてみると良いところもあるのですが、かなり課題を感じました。自分たちは科学技術を促進させることをやっていますが、それが最終的に繋がるものは何なのか?と考えると、人々の生活を豊かにさせることではあるのですが、地方の課題が都内よりも大きくやれることがたくさんありましたし、鳥取は日本の中で一番人口が少ない県で我々のモデルケースにもなると思いました。また人数が少ないから少数精鋭でやっていることもメリットでベンチャーのように何事も早く決まるので僕らもやりやすく、この地で何かできたら面白いな、と感じて活動しています。
久保 : 私も北海道出身で都内に出てきた身でやりたい仕事をここでやっているのですが、北海道に帰りたいと思いつつもやりたい仕事を選んでしまうとなかなか帰れない。仕事を選ばなければ帰れるのですが、宇宙に関わってなおかつ衛星リモートセンシングをやりたい、となると北海道に帰る選択肢は有りません。けれども田中さんの活動を通して地域に根差した産業、特に宇宙産業を盛り上げたい企業がどんどん出てくると、戻る人も出てくるのだろうな、と思います。一緒に田舎を盛り上げていけたら楽しいですね。
田中 : 面白い分野は多岐に渡るので、ここの自治体じゃなきゃだめということはないと思っています。いろんな自治体がいろいろな分野で活躍できるので、それぞれの特徴が出てくると思います。amulapoは楽しいことを楽しくやるメンバーが集まっていて、その中で鳥取県と関われたのは僕らも楽しくできている要因かなと思っています。
久保 : 2021年は福井が県民衛星を飛ばしたこともそうですが、各自治体がそれぞれ特色を出してきていることが面白いですし、そこにいろいろな事業で関われたら楽しいですね。
衛星データに期待すること
久保 : 最後に、これから衛星画像データに関して期待していることがありましたら聴かせてください。
田中 : 自分たちのサービスはBtoCになるので、いろいろな方々が使えるような観光などの新しい軸で展開できると面白いと思っています。衛星データは一次産業などのマクロ的なところで利用されていますが、今後衛星が増えていく中でどんどんミクロになっていくことに期待しています。リアルタイム性が出る・解像度が上がる・時間軸/空間軸での解像度が上がってくると思うので、それが出来るとビックデータ化して効率よくいろいろな課題に生きてくると思いますし、いろいろな軸で使えるようになります。今後衛星が進化してデータが良くなってくると用途が増えて、僕らもそういったところに向けて今回学ばせてもらったので、自分たちでも何か活用していけたら嬉しいです。
久保 : マクロ利用は衛星データの得意技ではあるのですが、今年くらいに打ち上げられる海外衛星のコンステレーションでは1日5回撮像、空間解像度30㎝の精度のデータも出てくるので、実際に出てきた時にどのような世界が見えてくるのか今からちゃんと考えて仕掛けていかなければならないと思っています。いろいろな武器がどんどん出てくるので、どうこちら側が料理していくのか、が課題になってくると思っています。どうしてもRESTECでは解析とか研究寄りになりがちですので、amulapoと一緒にエンターテイメントの利用も広げていけたら心強いと思っています。
小林 : 星みくじで使用している夜間光の空間解像度が上がればいいのに、と思っています。衛星画像のリアルタイム性や解像度が上がっていって、星みくじもどんどんもっと精度の良いものになっていくいいな、と思っています。
川野 : 夜間光データを使用したBtoCサービスの星みくじは貴重な例だと思っています。これからいろいろなデータが撮れようになると思うのですが、集めたデータを分析していかにエンタメ利用のBtoCプロダクトに落とし込めるのか、という点がキーですし個人的にもやってみたいところです。もっと衛星データが一般消費者に近いものになっていくといいのかなと思っています。
久保 : 同じ業界にいる人間だけではどうしても従来の考え方を覆すような新しいアイディアは生まれにくいと感じていますので、いろいろな業界の人とコラボレーションすることによって星みくじのようなプロダクトを作り、発信していくことが社会実装の一歩目だと思います。引き続き、今後ともよろしくお願いします。
今日はありがとうございました。