◉ 星野 卓哉 (経営コンサルタント)
先日、季刊誌『Newテクノマート「SO(創)』の最新号が届いた。時々何かの雑誌も届いてくるので、すぐに目次に目が行くとは限らないが、今回は一瞬「えっ」と思った。
これは、同誌の表紙に強調されるメインメッセージ「新しい時代『令和』の幕開け モノづくりのすべては『美しい調和』から」に対してではなく、「超小型人工衛星による宇宙研究プロジェクトで地域社会の未来に貢献」というTop Interviewのタイトルに反応したのである。知財や技財などの視角から「日本のものづくりを応援する戦略情報誌」として知られる同誌も、「超小型人工衛星」という時代的なキーワードを用いたトップインタビュー記事を掲載している。このことは、昨今の宇宙ビジネス関連の話題が従来に比べて多様化していることに似ており、遠い遠い宇宙が近くなってきそうな気もする。
人工衛星とは何か、なぜ「小型」人工衛星なのか、さらに超小型人工衛星の「超」は何を指すか。また、軍事衛星、気象衛星、通信衛星、地球観測衛星など、いろいろと言われている人工衛星は何のために開発されて、それらのどこが違って、何をどのように使っているのか。少しは分かると言っても、筆者はいまなおその奥深さに驚いている。
さて、前述したTop Interviewとはどのような内容か。インタビューに答えたのは、開学50周年を機に工科系総合大学に生まれ変わった福井工業大学の掛下学長であり、同大学は画期的な「ふくいPHOENIXプロジェクト」で脚光を浴びているという。
思わずこのプロジェクトに惹かれるが、同プロジェクトは文部科学省の私立大学研究ブランディング事業に採択され、2016年にスタートした一大事業であるという。具体的には同大学が独自開発の超小型人工衛星(高さ約30cm、重さ約3kg)から地上にさまざまな観測データを送り、同大学あわらキャンパスにある直径10mを超える北陸最大のパラボラアンテナでそれを受信する。このデータをAIやIoTなどによって、「星空ツーリズム」という新たな観光事業の展開や、農産物の生育診断と管理を局所的に行う精密農業などにおいて活用する。もって福井・石川・富山の地域振興や防災に役立てるとの計画である。
超小型人工衛星が新たな観光事業の展開や精密農業の推進に役立つ、このような未来に貢献する構想はなかなか興味深いが、いまは時代的なキーワードとなっているAIやIoTなどとは具体的にどのような関係にあるのか、条件反射的な好奇心が抑えられない。
同大学が開発し、2019年の秋に打ち上げられる予定の超小型人工衛星からさまざまな観測を行うことは、従来の(大型)地球観測衛星と同様であり、いわゆる「衛星リモートセンシング」のことである、と理解してよかろう。ならば、超小型人工衛星の「観測データ」、すなわち衛星リモートセンシングデータ(ときに「リモセンデータ」ともいわれる)から何が見えて、どのような技術でどのように解析を加えたら、リモセンデータの他にない実利用が図られるか、という時流に乗った思考がより一層求められることになるだろう。
衛星はいろいろ、人生もいろいろ、考えはいろいろ、悩みもいろいろではあるが、時々、この「地球を観る、学ぶ、拓く」を目指す「リモセン研修ラボ」に来ると、きっと何かの関連情報や答え、またはこれらに繋がるキーワードやヒントが得られるだろうと、筆者も強く期待したいひとりである。次回、またお会いしよう。
◆ リモセン雑感2|グッドデザイン賞の審査基準の変化からの連想
星野 卓哉(ほしのたくや)
経営コンサルタント。
長年、衛星リモートセンシング業界にも身を置き、調査研究、経営コンサルティン、新規サービス開発、人材育成などに取組む。
産学官各界における講演多数。